在宅勤務手当が非課税に?!国税庁から在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQが公表されました!
国税庁は1月15日に、新型コロナウィルス感染症の影響によるテレワーク利用者の増加に対応した「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表しました。この記事では、在宅勤務手当が従業員や企業に与える影響や、非課税となる場合の条件・計算方法をご紹介します。
1.在宅勤務手当とは
在宅勤務を行うにあたり、ネット環境の整備や仕事スペースの確保などの仕事環境を整える為に、ある程度のまとまったお金が必要となります。また、自宅にいる時間が長くなるので、光熱費や通信費などもこれまで以上にかかってきます。短期的な在宅勤務であれば費用は小さな額かもしれませんが、長期化している新型コロナウイルス感染症を考慮すれば、社員にとって負担が大きくなっている事でしょう。このような設備費用と光熱費や通信費をまかなうために、在宅勤務手当を導入する企業が増えています。
上述した以外にも、感染予防対策費用、オンラインコミュニケーションのための費用、サテライトオフィス等の利用に要する費用としている企業もあり、各社それぞれのようです。充実した仕事環境を整備することは、テレワークでも従業員の仕事効率を維持・向上するために欠かせないものとなってきています。
また、支給金額については、インターネットに公表されている企業をみると、2,000円~50,000円くらいと各社様々です。会社が何に使うための手当として支給するかという目的によって金額を検討するとよいでしょう。
2.在宅勤務手当の導入でどんな影響がある?
【在宅勤務手当の新設による社会保険料への影響】
在宅勤務手当を新たに毎月支給することにより、固定的賃金が変更となりますので、社会保険の標準報酬月額が変更、つまり社会保険料が増額となる可能性があります。
在宅勤務手当の新設の他に、交通費などの支給方法の変更(月額から日単位での支給へ変更するなど)をした場合も、随時改定により社会保険料に増減が生じる可能性があります。
企業にとっては、定期代の支給をなくし、代わりに在宅勤務手当の原資にあてたり、手当の額によっては経費削減になるかもしれません。
社会保険料や安くなることは、従業員にとっては手取り額が増えるので嬉しいことかもしれませんが、健康保険の各種給付金が低くなってしまったり、将来の年金額が増減することにもなり得ます。
【働き方改革の促進】
在宅勤務手当が支給され、新しい働き方が浸透・定着すれば、多様化する働き方にも対応できるでしょう。働き方改革が促進されることで、企業のアピールに繋がり新たな雇用の獲得ができたり、従業員の定着率アップになるかもしれません。
3.在宅勤務手当は課税?非課税?
企業が従業員に在宅勤務手当(従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの)を支給した場合は、給与として課税する必要があります。
また、在宅勤務に必要な事務用品などは、貸与であれば給与として課税する必要はありませんが、支給するとなると従業員に対する現物給与として課税する必要が出てきます。
ですが、費用の実費相当額を精算する方法により支給する一定の金銭については、給与として課税する必要はありません。
4.どんな精算方法だと非課税に?
【事務用品費の場合】
精算方法は2つあります。
1つは、企業が従業員に対して仮払いした後、従業員が事務用品を購入し、その領収証などを企業に提出してその購入費用を精算するという方法です。
もう1つは、従業員が立替払いにより事務用品を購入した後、領収証などを企業に提出してその購入費用を精算する方法があります。
【通信費、電気料金の場合】
こちらも精算方法は2つあります。
1つは、企業が従業員に対して、在宅勤務に通常必要な費用として金銭を仮払いした後、 従業員が家事部分を含めて負担した通信費や電気料金について、業務のために使用した部分を合理的に計算し、その計算した金額を企業に報告してその精算をする方法です。
もう1つは、従業員が家事部分を含めて負担した通信費や電気料金について、業務のために使用した部分を合理的に計算し、その計算した金額を企業に報告してその精算をする(業務のために使用した部分の金額を受領する)方法があります。
5.合理的な計算方法とは?
【通信費の計算方法】
従業員が負担した通信費について、在宅勤務に要した部分を支給する場合、業務のために使用した部分はどのように計算すればよいでしょうか。
基本使用料やデータ通信料などについては、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。 例えば、次の【算式】により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。
※上記算式の「1/2」については、1日の内、睡眠時間を除いた時間の全てにおいて均等に通信料が生じていると仮定し、次のとおり算出しています。
① 1日:24 時間
② 平均睡眠時間:8時間
(「平成 28 年社会生活基本調査」(総務省統計局)で示されている7時間 40 分を切上げ)
③ 法定労働時間:8時間
④ 1日の内、睡眠時間を除いた時間に占める労働時間の割合:③÷(①-②)= 8時間/(24 時間-8時間)= 1/2
【通話料の計算方法】
通話料(上記の基本使用料を除く。)については、通話明細書等により業務のための通話に係る料金が確認できますので、その金額を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
なお、業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員については、通話明細書等による業務のための通話に係る料金に代えて、上記の【算式】により算出したものを、業務のための通話に係る料金として差し支えありません。
【電気料金の計算方法】
電気料金の場合、下図で示した算式によって算出したコストを支給した場合は、給与として課税しなくて差し支えないとしています。
上記の算式によらずに、より精緻な方法で業務のために使用した基本料金や電気使用料の金額を算出し、その金額を企業が従業員に支給している場合についても、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。
その他にもスマートフォンに係る料金を支給した場合や、レンタルオフィス代についても国税庁から計算例が公表されています。
参照:国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」
6.最後に
今回は、在宅勤務手当の説明と注意点、非課税として処理をする際の計算式などをご紹介しました。
また細かい事ですが、手当が社会保険料や税金に様々な影響を与えることをご認識いただけたかと思います。既に手当として給与支給している企業様については、メリット・デメリットなど総合的に判断して、支給・清算方法を検討し直すのも良いかもしれません。
今後もテレワークの導入拡大や、在宅勤務費用の支給の制度化の動きが見込まれますので、これから導入を検討している企業様含め、従業員に丁寧に説明をすることでトラブルを回避し、企業と従業員双方が納得した上で進めていきましょう。
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