新卒の早期離職を防止するには?
12月になり、4月に入った新入社員は入社してから9カ月が経過しようとしています。
もう、新入社員という呼び方も馴染まない頃でしょうか。
例年であればそういった時分ですが、今年は新型コロナウイルスの影響も大きく、なかなか新人の育成・ケアにまで手が回っていない部分もあるかもしれません。
自宅待機、入社式の中止、Webによる研修など今年度は異例尽くしですので、会社側も社員の方々も大なり小なり不安を抱えていらっしゃることでしょう。今年から社会人デビューを果たした新入社員に至っては言わずもがな、きちんとしたケアが必要となります。
目次
そもそも新入社員の離職率は?
一般的に新入社員の職場定着は重要と言いますが、現状どれ程の新入社員が「早期離職」をしているのでしょうか。
以下の表は平成31年度3月までの新規大卒就職者の離職率を表したものです。
表の黒色部分が1年目の離職率、白色部分が2年目の離職率、水色部分が3年目の離職率で、一番上の数字が3年目までの合計の離職率です。
参考:厚生労働省HP
表を見ると、平成29年までは約3割程度を保っています。30年と31年についてはまだ2年目、1年目までの離職率しか記載されていないため、単純に他年度と比較することはできませんが、1、2年目のみで比較するとやや増加しており全体で考えた場合、3割を超える程度の値が予想されます。
今年度におけるコロナの影響がどの程度表れてくるのかは分かりませんが、新入社員の3人に一人が3年以内に離職するという事象に変化は見られません。
また、傾向として大企業よりも人数の少ない企業の離職率の方が高く、大卒者よりも中卒、高卒者の離職率の方が高い傾向にありますので、中小企業や大卒者以外の人材を採用している企業については特に注意が必要となります。
入社前のミスマッチを防ぐ
新入社員の離職率を下げるためには、どこに注意したら良いのでしょう。
まず、挙げられるのが、入社前のミスマッチを防ぐという点です。離職率を下げる為には、内定後、入社後の対応はもちろん重要ですが、採用の段階から対策を講じる必要があると言えます。
以下の表は3年以内に離職した新卒を対象に行ったアンケートでの、企業・団体を退職した理由のランキングになります。
参考:https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/061
このランキングでは、第一位から順に、「自身の希望と業務内容のミスマッチ」、続けて「待遇や福利厚生に対する不満」、「キャリア形成が望めない為」、「長時間労働のため」となっています。
これらの理由は、どれも入職前に確認することができる内容です。説明会や面接を重ねる中で、企業側は業務内容や待遇、福利厚生を明示し、求職者に十分な理解をしてもらう必要があります。説明会や面接では言いづらいこともあると思いますが、あやふやにすることなく、敢えてオープンにしていくことを心がけましょう。
いずれにしても、そういったことを伏せた上で集めた内定者は、早期に離職してしまう可能性が高く、企業側にとっても求職者側にとっても不幸な結果を招きます。また敢えてオープンにしていくことで、求職者側から信頼を得やすいという利点もあります。
内定者へのフォローも必須
選考で十分に相互理解を深め、晴れて内定を出すこととなった場合、その後の行動も重要となります。
現在の就職活動の状況として、早い人は大学3年生のうちに、遅くとも大学4年生の夏前には多くの人が内定を得ているという傾向があります。つまり、大多数の人は企業から内定を得て実際に入社するまでに約半年以上のブランクが存在することになります。そして、この間に「本当にこの会社に決めてよかったのか」「自分が本当にやりたいことはこの会社でできるのだろうか」などと、悩んだり、心変わりする人も多いようです。
熟考の上、内定を出したにもかかわらず、内定後に辞退をされてしまっては意味がありませんので、こういった事例を防ぐためにも、内定者のフォローは重要です。
では、どのようなことを行えばいいのか、具体的な事例をご紹介します。
・メール、電話等による連絡
こちらは日程調整や特別なプログラム等の準備も必要なく、比較的実行しやすい方法といえます。定期的に連絡を取り合うことで、自分はこの会社の内定者であると実感出来る為、内定者に安心感を与えることができます。
・座談会、懇談会の設定
人事担当者のみとのやり取りではなく、実際に働いてから上司になる可能性のある人と接することで、より入社後のイメージが描きやすくなります。また、内定者同士に関わりを持たせることで、仲間意識を芽生えさせることができます。
・社内イベントへの参加
会社の多くの人と関わることが出来る為、会社の雰囲気を知って貰うことが出来ます。また、お互いに形式ばった態度ではなく、フランクにコミュニケーションを取ることができる為、より交流を深めることができます。ただし、羽目を外しすぎて不安感を抱かせてしまうようなことのないよう、注意しましょう。
・内定者研修の実施
仕事の内容に関わることを事前に研修で行うことによって、4月から知識0の状態でスタートしなければならないことへの不安を解消することができます。ただし、いきなりハードな研修を実施することは、逆に内定者への負担となり辞退へ繋がってしまう恐れがあります。未だ学生であるということへの配慮を忘れないようにしましょう。
入社後のフォローアップ
入社した後はそれぞれの上司にすべて任せてしまえばいい、という訳ではありません。「社会人」も「会社」も初めて体験することばかりですので、不安を解消してあげる必要があります。また、その会社自体にの空気や雰囲気に馴染めるように手助けしてあげることも重要です。会社という特殊なコミュニティーに所属するということを考えて、できるだけスムーズに周囲とコミュニケーションをとれるよう配慮しましょう。言葉を教えてあげるということも重要です。その業界の用語、社内で使っている共通の用語は、使用している側からすると当たり前過ぎて気づけない部分ですが、新人からすると何を言っているのかさっぱりだったりします。言葉が分からないと疎外感を抱きやすい為、一つ一つ説明をしてあげる機会を設けられると良いでしょう。
・新人研修
入社後すぐに現場に丸投げしてしまうのではなく、会社について、会社の事業について、各職種の仕事について、より詳しい知識を身につける機会を設けましょう。いきなり現場にすべて任せてしまうと、現場の上司にとっても、新人にとっても大きな負担となってしまいます。まずは社会人としての基礎から一歩ずつステップアップを目指しましょう。他にも、自社ブランドについてきちんと理解して貰うことで、仲間意識が芽生えたり、自社に対するプライドを抱けるという効果も期待できます。
・メンター制度
所属する部署の上司とは別に、年の近い先輩社員や、社歴が近い先輩社員が新入社員の相談役となることで、より個々に適したサポートをすることができます。上司以外にも相談相手がおり、またその相手が年も近く話しやすいといった点で、新入社員に対して安心感を抱かせることができます。
・フォローアップ面談
入社して始めの1週間、もしくは1か月間、研修をしたからと言って、安心はできません。人の気持ちは移り変わるものですので、定期的に面談を行い、フォローをする必要があります。困っていることはないか、今後はどうしていきたいか、お互いの方向性をすり合わせることを意識して行いましょう。面談を行う間隔としては、一般的に3か月毎が適しているとされます。4月入社の場合は7月、10月、1月、翌年の4月といった具合になります。
まとめ
離職率を下げるには、入る前と後の両方でのフォローが必要となります。離職率の高さ、定着率の低さにお悩みの方は、是非こちらの記事を参考にしていただければと思います。
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