「使用者の責に帰すべき事由」民法と労働基準法の解釈の違いとは?
当社は、複数の事業を営んでおりますが、そのうち採算がとれないA事業を廃止することになりました。A事業で働く社員には、事業を廃止すること、廃止に伴い退職となる旨の事前説明を行い、納得をして頂きました(退職を争う社員はいない)。事業の廃止は、来月末日となりますが、実際に稼働をしなくなるの(実質的な休業)は来月16日となります。
そこで、上記のように会社の都合で、年次有給休暇の権利がない社員を休ませた場合、平均賃金の60%相当の「休業手当」を支給すれば、事足りるという認識ですが、問題はないでしょうか?
回答
まず、退職日の確認ですが、稼働が停止する16日以後も在籍されるようなので、退職日が事業の廃止日である来月末日であることを前提に回答致します。
次に、会社都合による社員の休業について、労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」とあります。
他方、民法第536条2項では「債権者(使用者)の責に帰すべき事由によって債務を履行(労務を提供)することができなくなったときは、債務者(社員)は反対給付(賃金)を受ける権利を失わない・・」とあり、賃金の100%を請求できることになります。ただし、同じ「責めに帰すべき事由」という文言でも、民法ではその範囲が狭く、「使用者側に起因する経営上の障害」が含まれないことは、判例(ノース・ウエスト航空事件)の示すところです。民法は、使用者に故意または過失を求めております。
そのため、本件では、社員が会社の過失を立証して請求をしない限り、労基法上の休業手当の「平均賃金60%」で事足りるように思えますが、訴訟のリスクを払拭し、会社都合の退職ですが、より円満な形で関係を終わらせるためにも、賃金の100%を保障することも検討すべきかと思います。休業手当についての説明がなされていない場合は、尚更そうすべきです。
もし、実質的な休業期間中の賃金額を気にされるのであれば、15日をもって退職とする方向で説明することも可能かもしれませんが、月末の退職に比べて社会保険等で不利益になるので、さらに丁寧に説明が必要となります。
次に、会社都合による社員の休業について、労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」とあります。
他方、民法第536条2項では「債権者(使用者)の責に帰すべき事由によって債務を履行(労務を提供)することができなくなったときは、債務者(社員)は反対給付(賃金)を受ける権利を失わない・・」とあり、賃金の100%を請求できることになります。ただし、同じ「責めに帰すべき事由」という文言でも、民法ではその範囲が狭く、「使用者側に起因する経営上の障害」が含まれないことは、判例(ノース・ウエスト航空事件)の示すところです。民法は、使用者に故意または過失を求めております。
そのため、本件では、社員が会社の過失を立証して請求をしない限り、労基法上の休業手当の「平均賃金60%」で事足りるように思えますが、訴訟のリスクを払拭し、会社都合の退職ですが、より円満な形で関係を終わらせるためにも、賃金の100%を保障することも検討すべきかと思います。休業手当についての説明がなされていない場合は、尚更そうすべきです。
もし、実質的な休業期間中の賃金額を気にされるのであれば、15日をもって退職とする方向で説明することも可能かもしれませんが、月末の退職に比べて社会保険等で不利益になるので、さらに丁寧に説明が必要となります。
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