【過労死問題】は解決できる?!「残業ゼロ」は可能?!
2016年5月に厚生労働省が発表した「過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業」によると、1か月間の残業が最も長かった正社員の残業時間が、過労死の労災認定基準である「月80時間」を超えた企業は22.7%に上っている。しかも、従業員「1000人以上」では月80時間を超えた割合が56.9%と過半数に達していることが明らかになった。
長時間労働は生活の状態にすれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性が高くなり、生産性は低下する。また、離職リスクも高くなり、何か問題が起きれば企業のイメージの低下も招くなど、様々な影響を生じさせることになる。社員の健康、生活を守るだけではなく、企業経営の観点からも長時間労働を抑える必要がある。
しかし、長時間労働の解消は簡単に解消できないことも事実ですね。数ある企業の中には、「残業ゼロ」を実現している企業はごく少数である。
今回は、ごく少数の企業の成功事例を紹介したいと思います。なぜ、その企業では「残業ゼロ」が可能なのか?どのような工夫をしているのかを解説していく。
ランクアップ
「ランクアップ」は2005年に設立された化粧品の開発と通信販売を手掛ける会社だ。社員は約45人。ほぼすべての社員が8時30分に始業し、17時には退社する。就業規定上の勤務時間は17時30分までだが、「仕事が終わっていれば退社してもいい」というルールを作ったところ、全員が17時に帰るようになった。毎日17時以降に社内に残る人はほとんどいない。
そして、退社後のメールチェックは禁止だ。とはいえ、誰もが1日分の仕事は社内で完了させているので、持ち帰り仕事をする人はいない。もちろん、時にどうしても今日中にやらなければいけない仕事が重なってしまうこともある。そんな時には理由を明確にしたうえで残業をする。だが、そうした状況が続いてしまう場合は派遣社員を手配するなどして打ち手を打つ。
残業ゼロの取り組み:
① 「働き方」革命7か条:
働き方革命1:全社員に定時退社を徹底する
働き方革命2:毎月の業務の棚卸しで、やる・やらないを選別
働き方革命3:取引先を巻き込む理念共有型アウトソーシング
働き方革命4:ルーティンワークはどんどんシステム化
働き方革命5:事務職の廃止
働き方革命6:業務スピードを上げる6つの社内ルール
働き方革命7:残業ゼロへの最終兵器「17時に帰っていいよ」制度
② 社内環境でづくり
1・社員同士のコミュニケーション促進:悩みを直接話す機会を作る
2・情報共有:育児と仕事が両立できるキャリアイメージ
3.改善提案制度:現場の声を反映し、意見収集する仕組みで、継続的に業務や働く環境の改善していく。
これによって、社員たちのやりがいや働きやすさを実現し、高業績へつなげる。
このような様々な取り組みで、ランクアップはほとんどの社員が17時退社、残業はゼロを実現するだけではなく、10年連続売り上げ増だ。
日本テクノ・ラボ
残業時間の少ない企業ランキングの1位を獲得した。
裁量労働制の導入とPDCAの徹底、報告と内省のサイクルで計画どおりの業務管理を実践し、残業ゼロに達成した。
プリンターのコントローラーや、コントローラー用ソフトウエアの受託開発、情報セキュリティーシステムの開発・販売等をしている会社である。
効率的に働いてさっさと帰るようにすれば、社員は充実した生活を送ることができる。仕事の効率が上がれば残業をしなくても売り上げを1.2倍、1.5倍に増やすことが可能になる。収益性と健全性を両立するために、様々な取り組みを実行している。
① 労務・業務管理の取り組み
1・労働裁量性の導入:時間管理を一切しないマネジメントが仕事効率を促し、残業ゼロ実現の大きな原動力だ。
2・PDCAの徹底:自らの裁量で義務と責任を果たしてこそ、残業のない効率的かつゆとりある働き方が可能になる。
Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。
Do(実行):計画に沿って業務を行う。
Check(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する。
Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする。
この4段階を順次行って1周したら、最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように1周ごとに各段階のレベルを向上(スパイラルアップ、spiral up)させて、継続的に業務を改善する。
3・作業工程のみ見積もり:残業ゼロを前提に作業工程をくむことをてっていした。
② 業務管理の進行曲線
1・作業工程上の課題をチェック
2・フィートバックする
3・タイミング:チェックとフィードバックを行う上で何よりも大切なのはタイミングだ。
両社の共通点
成功例としての2社の共通点をまとめ、参考にしていただければと思います。
① 経営者の本気度:経営方針としてあげ、企業文化・風土として根付かせる。
② 事業を支える経営基盤:高い技術力、優れた開発力、独自のサービスを武器に業績を伸ばす。
③ 業務管理の徹底・実践:業務進行において PDCAサイクル を徹底・実践する。
まとめ
長時間労働最大の要因となっている長時間労働をなくせるかどうかにかかっていると思う。そのためには、企業が働き方に対する考え方を変えること、そして、長時間労働を許している制度上の問題を解消すること、この2つに取り組む必要がある。
まずは、企業の取り組みだ。
働く人の健康が損なわれるようでは、生産性も上がらないのではないでしょうか。
長時間労働で体を壊してまで働くことが果たして価値のあることなのか、社会全体で問い直していく必要があると考えられる。成功事例を参考にして、元気な働く社会の実現に参りましょう。
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