何ができれば昇格なのか~成果だけに頼らない等級基準の整え方~

評価は毎年高いのに昇格しない社員がいて、本人や現場上司から「結局、何ができれば次の等級に上がれるのか分かりにくい」と言われることがあります。
一方で、成果の高い人を早めに昇格させたら、部門をまたぐ調整やメンバー支援で苦戦してしまうこともあります。
昇格・等級の基準を、成果だけに寄らず、社員にも管理職にも分かりやすく整理するには、どう考えればよいでしょうか

回答

昇格基準が分かりにくくなる一番の理由は、「今の役割で成果を出せること」と「次の役割を安定して担えること」を、同じように扱ってしまうことです。
この2つは似ているようで、実は少し違います。今の仕事で高い成果を出せる人でも、一段上の役割で求められる判断や調整まで、すぐに同じようにできるとは限りません。

そのため、昇格を考えるときは、まず「評価」と「昇格」を分けて考えることが大切です。
評価は、今の役割でどのような成果や行動があったかを見るものです。
一方で昇格は、次の役割で増える難しさを、その人が安定して扱えそうか(ここがポイント)を見るものです。
ここが混ざると、「成績が良いのに、なぜ上がれないのか」「逆に、なぜこの人を上げたのか」という不満が出やすくなります。(よくある話で、トップセールスマンが良いマネジャーになれない問題)

では、どう整理すればよいか。実務では、次の順番で考えると分かりやすくなります。

1. まず、上の等級で何が難しくなるのかを言葉にする

昇格基準を作るとき、多くの会社は「必要なスキル」だけを書きがちです。
ただ、上の等級になるほど増えるのは、単純なスキルの数というより、仕事の難しさです。

たとえば、上の等級では次のような難しさが増えます。
・正解が一つではない中で、優先順位を決める
・立場の違う人の意見を整理し、話を前に進める
・自分だけでなく、周囲の成果にも目を配る
・一度うまくいったやり方を、再現できる形にする

つまり、上位の役割ほど、「自分で頑張って終える仕事」よりも、「複数の状況や人を見ながら進める仕事」が増えていきます。
この違いを先に言葉にしておくと、昇格基準の土台がぶれにくくなります。

2. 抽象的な言葉ではなく、見える行動に置き換える

昇格基準でよくある失敗は、「リーダーシップがある」「視座が高い」「巻き込み力がある」といった、意味は分かるが判断しづらい言葉だけで終わってしまうことです。
これでは、上司によって見方が変わりやすくなります。

そこで、基準はできるだけ見える行動に置き換えます。
たとえば、次のような書き方です。

・関係者の意見が分かれたときに、論点を整理できる
・自分だけで抱え込まず、必要な相手に早めに相談できる
・難しい依頼でも、目的と優先順位を整理して説明できる
・一度出た成果を、自分だけのやり方で終わらせず、周りでも使える形に直せる

こうしておくと、本人も管理職も、「何を伸ばせば次に近づくのか」が見えやすくなります。

3. 昇格判断は「一番うまくいった時」ではなく「安定してできるか」で見る

ここは意外と大事な点です。
人は、慣れた仕事や得意な場面では高い力を出せますが、曖昧な状況や利害がぶつかる場面になると、同じようには力が出ないことがあります。

そのため、昇格判断では、「たまたま一度うまくいったか」ではなく、いくつかの場面で安定してできているか、を見るほうが実態に近づきます。
たとえば、次のような場面を分けて見ると分かりやすいです。

・普段の担当業務ではどうか
・トラブルや変更が起きたときはどうか
・複数部署が関わるときはどうか
・短い時間で判断が必要なときはどうか

昇格は、その人の「最高点」を見るより、普段どの水準まで安定して出せるかを見るほうが失敗しにくくなります。

4. 昇格の前に、一段上の仕事を一部だけ任せてみる

昇格を決める前に、次の役割に近い仕事を一部だけ経験してもらう方法は、とても有効です。
たとえば、次のような役割です。

・小さな会議の進行を任せる
・部門をまたぐ案件の調整役を任せる
・後輩への助言や支援を任せる
・トラブル時の一次対応や整理を任せる

こうした場面を見ると、その人が次の役割でどこまで対応できるか、どこで支援が必要かが見えてきます。
昇格してから困るより、先に少し試して見立てるほうが、本人にも組織にも負担が少なくなります。

5. フィードバックは「足りない点」ではなく「次の役割との差」で伝える

昇格見送りの場面で、本人が一番納得しにくいのは、「まだ早い」「もう少し経験が必要」といった曖昧な言い方です。
大切なのは、今の強み、と、次の役割に必要なことを分けて伝えることです。

たとえば、
「担当業務の成果は安定して出せている」
「一方で、次の等級では、複数の関係者の意見を整理して優先順位を説明する場面が増える」
「まずは小規模な横断案件で、その役割を経験してもらいたい」
というように返すと、本人も次に何をすればよいかが分かります。

昇格基準は、合否を伝えるためだけのものではなく、次の成長の方向を示すものとして使えると、現場で生きやすくなります。

6. 最後に、管理職同士で見方をそろえる

どれだけ基準を書いても、管理職によって見方が違えば、社員には不公平に映ります。
そのため、昇格判断では、ケースを持ち寄って「このレベルの案件をどこまで自力で扱えたら次の等級か」を話し合うことが大切です。

ここでは、言葉だけで合わせるより、実際の事例でそろえるほうが効果的です。
「この人は成果は高いが、関係者調整はまだ支援が必要」
「この人は派手な成果は少ないが、難しい場面でも安定して周囲を動かせている」
といった比較を通じて、判断のぶれが少しずつ小さくなります。

まとめ
昇格基準を分かりやすくするためには、成果の高さだけで決めるのではなく、一段上の役割の難しさを、その人がどの場面で、どのくらい安定して扱えているか、を見ることが大切です。
仕事の難しさを言葉にし、見える行動に置き換え、昇格前に一部を試し、管理職同士で見方をそろえる。
この順番で整理すると、社員にも管理職にも説明しやすく、納得感のある基準に近づきます。
The following two tabs change content below.

HALZ人事メディア

人事実務の専門家集団「社会保険労務士法人HALZグループ」のwebメディア。人事制度、採用、労務、HRtech、法改正など旬の人事ニュースを掲載。実務に役立つExcelツールも無料配信中!

最新記事 by HALZ人事メディア (全て見る)

公開日: 人事制度設計

PAGE TOP ↑