計画・目標の継続性

新しい経営計画や目標を掲げても、当初の熱量が続かず、結局いつも「絵に描いた餅」で終わってしまいます。なぜ実行されないのでしょうか?

回答

「成功した姿」を強くイメージすればするほど、脳は「すでに達成した」と錯覚し、行動するためのエネルギーを失ってしまうからです。「理想」とセットで「障害」を直視する技術が必要です。

「目標は高く掲げよう」「成功した姿をありありとイメージしよう」。
多くの企業で、このようなポジティブシンキングが推奨されています。
キックオフミーティングで明るい未来を語り合い、高揚感の中でプロジェクトがスタートする。
しかし、1ヶ月もすれば日常業務に忙殺され、あの時の熱気はどこへやら……。

これは、社員のやる気や能力の問題ではありません。
人間の「脳のメカニズム」を無視した目標設定を行っていることが最大の原因です。
現代の心理学研究において、「ポジティブな空想は、行動力を奪う」という事実が明らかになっています。
理想的な未来を思い描いている時、私たちの脳は「すでにその願望は満たされた」と錯覚し、血圧が下がり、リラックス状態に入ってしまうのです。
これでは、困難に立ち向かうエネルギーは湧いてきません。

計画を「絵に描いた餅」で終わらせず、確実な成果に変えるためには、脳をリラックスさせるのではなく、「健全な緊張感」を作り出す必要があります。
そのための科学的なアプローチが、以下の3つのプロセスです。

1.「理想」と「現実」の強烈なコントラスト(対比)をつくる
目標達成率が高い人や組織は、楽観主義者ではありません。「楽観的な構想」と「悲観的な検証」の両方を併せ持つリアリストです。
ワクワクする目標を描いた直後に、必ず「今のままでは上手くいかない現実的な障害」を直視します。
•理想(光):このプロジェクトが成功すれば、業界シェア1位になり、自分たちの報酬も増える。
•障害(影):しかし現実には、既存業務で手一杯なメンバーがおり、新しいツールへの抵抗感も根強い。

このように、未来と現実のギャップ(落差)を脳にはっきりと認識させることで、脳は「このままではマズイ」と覚醒し、そのギャップを埋めるためのエネルギーを無意識レベルで動員し始めます。これを意図的に行うのが、実行力の鍵です。

2.障害を「外部」ではなく「内部」に見出す
計画が頓挫する際、多くの組織は「市場環境が変わった」「競合が強かった」「時間がなかった」という外部要因を言い訳にします。しかし、変えられない外部要因を嘆いても、行動は生まれません。
実行力のある組織は、障害を「自分たちの内側(内部要因)」に見つけます。
•「失敗して評価が下がることを恐れる、私たちの心理的ブレーキ」
•「部門間の壁を越えて相談に行くのを億劫がる、組織の悪癖」
•「上司の機嫌を損ねないよう、反対意見を飲み込む忖度」

これらはすべて、自分たちの内面にあるものです。
内面にある障害であれば、自分たちの意思で対処可能です。
「時間がない」ではなく「優先順位をつけられない自分たちの弱さ」と捉え直した瞬間、具体的な対策が見えてきます。

3.「気合」ではなく「条件付き計画」で自動化する
内なる障害を特定したら、それを乗り越えるために精神論(「もっと頑張ろう」「意識を高めよう」)を使ってはいけません。
精神力は消耗品であり、疲れている時には役に立たないからです。
代わりに、「もし(If)Xという障害が起きたら、その時は(Then)Yという行動をとる」という具体的なルールを事前に決めておきます。
•( ✖ 精神論) 会議では積極的に発言しよう。
•(〇 If-Then) もし、誰かの意見に対して全員が沈黙してしまったら、その時は、私が「あえて別の視点から見るとどうなるか?」と必ず質問する。
•(✖ 精神論) 忙しくても新規プロジェクトを進めよう。
•(〇 If-Then) もし、18時の時点でメール返信が終わっていなくても、その時は、PCを閉じて15分だけプロジェクトの資料を読む。

このように、「障害」をトリガーにして「行動」をプログラムしておくことで、迷いや葛藤が生じる隙を与えず、機械的に実行できるようになります。

結論:真のポジティブとは、ネガティブを直視すること
夢を語るだけなら誰にでもできます。しかし、成果を出す組織は、夢と同じだけの時間をかけて、「泥臭い現実の障害」と向き合っています。
「うまくいったらいいな」という空想から抜け出し、「何が私たちの足を引っ張るのか?」という問いを恐れずに立てること。それが、計画を現実に変えるための唯一の近道です。
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公開日: 人事制度設計

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