社員の「成長(度)」を人事評価に入れてもよいか?

当社では、人事評価を単なる査定ではなく、社員の成長にもつなげたいと考えています。

そこで、「成長」という項目を評価制度に加えることを検討しています。

たとえば、

「半年前より仕事の幅が広がった」

「難しい仕事ができるようになった」

といった変化を評価する考え方です。

一方で、成長の速さには個人差があります。

また、担当する仕事や上司によって、経験できることも違います。

社員の成長を人事評価に入れることに問題はないのでしょうか。

回答

成長を見ることには意味があります。ただし、「成長した人を高く評価する」という設計には注意が必要です

社員の成長を確認すること自体は、とても重要です。
ただし、
「成長支援と人事評価は、同じものではありません。」
ここを混ぜると、いくつか問題が起こります。

●「同じ人でも、発揮できる力はいつも一定ではありません」
人の能力は、資格のように一度獲得すれば常に同じように発揮できるものばかりではありません。

たとえば、
・慣れている仕事ではできる
・上司の支援があればできる
・初めての状況ではまだできない
・忙しくなると十分に発揮できない

ということがあります。

これは必ずしも「能力がない」ということではありません。
仕事の難易度、周囲の支援、経験の有無などによって、発揮の状態が変わるからです。
そのため、一時的にできなかったことだけを見て、
「成長していない」
と評価するのは慎重に考える必要があります。

●「成長機会そのものが平等とは限りません」
もう一つ重要なのが、仕事を通じた経験の差です。
たとえばAさんには、
・新しいプロジェクト
・他部署との調整
・後輩指導
といった仕事が多く与えられている。

一方、Bさんは定型業務を中心に担当している。
この状態で、
「どちらが大きく成長したか」
を評価すると、本人の努力だけではなく、「会社がどのような仕事を任せたか」まで評価結果に影響します。

成長機会を十分に与えていない社員に対して、「成長が少ないから評価を下げる」とするのは公平とは言いにくいでしょう。

●「成長そのもの」ではなく、「仕事で確認できる変化」を見る
成長を評価制度に取り入れるのであれば、
「人として成長した」
「視野が広がった」
といった抽象的な評価は避けたほうがよいでしょう。

代わりに、
・一人で対応できる仕事が増えた
・より複雑な案件を扱えるようになった
・周囲を支援できるようになった
・異なる立場を踏まえて判断できるようになった
・振り返った結果を次の仕事で実際に変えた
など、仕事上で確認できる変化を見る方法があります。

ポイントは、本人の性格や「人間としての成熟度」を評価するのではなく、”仕事に表れた変化を見ること”です。

●評価する部分と支援する部分を分ける
実務では、成長について次の二つに分けると整理しやすくなります。
・「人事評価で確認すること」
 現在の等級や役割で、どのような成果や行動を発揮したか。
・「成長支援で確認すること」
 何ができるようになったか。次に何を経験するとよいか。どこに支援が必要か。

後者まで細かく点数化すると、社員が弱みや失敗を話しにくくなることがあります。
「できなかったことを話すと評価が下がる」と感じるからです。

成長を支援したいのであれば、むしろ、
・今回うまくいかなかったこと
・まだ苦手なこと
・次に試してみたいこと
を安心して話せる場も必要です。

●「成長評価」を作る前に確認しておきたいこと
成長を評価項目に加える前に、少なくとも次の点を確認してみてください。
・成長機会は社員に公平に与えられているか
・評価対象となる変化を具体的に説明できるか
・一時的な不調と能力不足を区別できるか
・成長のための対話が査定の場だけになっていないか

成長を大切にする会社ほど、すべてを評価点にする必要はありません。
「評価するものと成長のために観察・対話するものを意識して分けること。」

これが、社員の成長を人事制度に取り入れる際の重要なポイントです。
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公開日: 人事制度設計

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