挑戦評価と納得感

若手や管理職にもっと挑戦してほしいのですが、現場では「失敗すると評価が下がる」と受け止められており、結局は無難な目標ばかりになりがちです。
一方で、評価制度に「挑戦」を入れようとすると、上司によって判断がぶれて、不公平感が出るのではないかと心配です。

挑戦を促しながら、評価の納得感も保つには、どう考えればよいでしょうか。

回答

このテーマでまず押さえたいのは、「挑戦を評価すること」と「失敗を甘く見ること」は同じではないという点です。
多くの会社で挑戦が増えにくいのは、社員に意欲がないからではなく、「挑戦してうまくいかなかったときに損をするかもしれない」と感じているからです。
つまり、課題は本人の気持ちだけではなく、挑戦しても安心して取り組める評価の運用になっているかにあります。

そのため、制度上「挑戦を大事にする」と書くだけでは不十分です。
大切なのは、挑戦をどう定義し、何を見て評価し、どう伝えるかを、現場でぶれにくい形にしておくことです。

進め方としては、次の5つのステップで整理すると分かりやすくなります。

1. まず、目標を「基本」と「挑戦」に分けて考える

挑戦が進まない会社では、すべての目標が同じ土俵で扱われていることが少なくありません。
そうすると、社員は確実に達成できそうなものばかりを選びやすくなります。

そこで、目標を大きく2つに分けて考えると運用しやすくなります。

1つ目は、役割上きちんと果たしてほしい基本目標です。
これは、日常業務や担当業務として、一定の水準で達成してほしい内容です。

2つ目は、少し背伸びをして取り組む挑戦目標です。
たとえば、新しいやり方を試す、難易度の高い仕事に踏み込む、関係者を広く巻き込む、といったものがこれに当たります。

この2つを分けておくと、社員は「挑戦した結果、少し未達でも基本目標まで否定されるわけではない」と理解しやすくなります。
まずはここで、挑戦しやすい空気をつくることが大切です。

2. 次に、「挑戦」とは何かを具体的にしておく

「挑戦を評価する」とだけ言うと、上司によって受け取り方が変わります。
ある上司は“目立つ仕事を引き受けること”を挑戦だと考え、別の上司は“改善を続けること”を挑戦だと考えるかもしれません。
これでは、現場に不公平感が出やすくなります。

そのため、会社として「挑戦とはどのような行動か」を、できるだけ具体的にしておく必要があります。
たとえば、次のように整理すると分かりやすくなります。

・これまでより少し難しい役割や仕事に取り組む
・前例の少ないテーマや新しい方法に踏み出す
・改善提案や工夫を実際の行動に移す
・関係者を巻き込みながら進め方を変える
・途中で課題を見つけ、やり方を修正する

ここでのポイントは、挑戦を“気合い”や“勇気”のような曖昧なものではなく、行動として見える形にすることです。そうすることで、評価の話もしやすくなります。

3. 評価では「結果」だけでなく「進め方」も見る

挑戦は、結果だけで評価すると現場に広がりにくくなります。
なぜなら、難しいテーマほど、良い取り組みであっても、短期では思った通りの成果が出ないことがあるからです。
そのため、挑戦を見るときは、結果だけでなく、どのように進めたかもあわせて確認することが重要です。

見るポイントは、難しく考えすぎず、次の3つで十分です。

まず1つ目は、挑戦のテーマが妥当だったかです。
その人の役割や経験に対して、少し背伸びするくらいの内容だったかを見ます。
無理が大きすぎるものは、挑戦というより無謀になりやすいからです。

2つ目は、進め方に考えがあったかです。
事前にある程度、進め方や注意点を考えながら動けていたか、関係者への相談や確認ができていたかを見ます。

3つ目は、途中で見直しができたかです。
うまくいかないときに、そのまま押し切るのではなく、やり方を修正したり、助けを求めたりできたかを見ます。

この3点で見ていくと、「成功したか失敗したか」だけではなく、「どのように取り組んだか」を落ち着いて評価しやすくなります。

4. 期末だけで判断せず、途中経過を確認する

挑戦の評価が難しくなる一番の原因は、期末になってから一気に判断しようとすることです。
期末だけでは、途中でどんな工夫があったのか、何を学んだのか、どこで難しさがあったのかが見えにくくなります。

そのため、月1回や四半期ごとなど、定期的に短く確認する場を持つことが有効です。
確認する内容は、難しいものでなくて構いません。

・今、どこまで進んでいるか
・うまくいっていることは何か
・難しくなっている点は何か
・次にどう動くか

この確認を続けることで、期末の評価が「結果だけの判定」ではなく、「取り組みの流れを踏まえた評価」に近づきます。人事としても、評価の材料が集まりやすくなります。

5. 最後に、評価者同士で見方をそろえる

挑戦の評価で納得感を左右しやすいのは、上司ごとの見方の差です。
ある上司は「結果がすべて」と考え、別の上司は「やってみたこと自体に意味がある」と考えるかもしれません。この差が大きいと、社員から見て不公平に感じられます。

そこで必要なのが、評価者同士で「どのような挑戦を評価するのか」を事前または期末にすり合わせることです。
ここで大事なのは、抽象的な議論だけで終わらせないことです。
実際の事例を持ち寄って、「このケースはどこを評価するか」「未達だったが、進め方としてはどうだったか」を話し合うほうが、見方がそろいやすくなります。

また、社員へのフィードバックも、「良かった・悪かった」で終わらせるのではなく、次にどう動けばより良くなるかまで伝えることが重要です。
挑戦を評価に入れるのであれば、評価は判定だけでなく、次の行動につながるものであるべきです。

まとめ

挑戦を増やしながら評価の納得感も保ちたい場合は、「挑戦を大事にする」と掲げるだけでは足りません。
基本目標と挑戦目標を分けること、挑戦の中身を具体化すること、結果だけでなく進め方も見ること、途中経過を確認すること、評価者の見方をそろえること。
この順番で整えていくと、現場でも無理なく運用しやすくなります。

挑戦は、気持ちだけで増えるものではありません。安心して取り組める設計と納得しやすい評価の運用があってこそ、少しずつ広がっていくものです。
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公開日: 人事制度設計

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