「働き方改革」を知ろう!~「働き方改革」の背景と「働き方改革」の3つの課題と対策~

大企業の新入社員の「過労自殺問題」や「少子高齢化社会の進行」・24年前にピークを迎えて以来、減少の一途を辿る「労働力人口」等々・・・。
こういった問題は、国全体の「生産力低下」・「国力の低下」に直結してしまいます。そこで2016年9月に政府によって「働き方改革」が開始されました。
では、この「働き方改革」とはどういった改革なのでしょうか・・・?

「働き方改革」とは「一億総活躍社会を実現するための改革」のことで、働く人の視点に立って企業文化・ライフスタイル・働き方を抜本的に変革させようとする改革であり、労働生産性・労働参加率の恒常による日本経済の再生を図る政策のことです。また、「一億総活躍社会」とは、「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」のことです。安倍内閣は働き方改革実現のために安倍首相や働き方改革担当大臣などで構成された働き方改革実現会議を通して働き方改革実行計画を策定しました。

 

1. 「働き方改革」の背景

1-1.背景① 労働人口の減少

日本の総人口の減少が進行している現在、少子高齢化に伴い「生産年齢人口(15-64歳)」が総人口を上回るペ

ースで減少しています。
では、現在の日本の総人口と将来人口推計はどのようになっているのでしょうか・・・?
下図は内閣府のホームページに記載されている「人口・経済・地域社会の将来像」です。

 

 

表より、このまま行けば50年後には日本の総人口が8,674万人に減少するだろうということが分かります(人口減少率31.9%)。このように人口減少率の大きい日本では、それに伴い労働人口の減少もまた問題となっています。下図は国立社会保障・人口問題研究所のホームページに記載されている「労働人口の推移」です。

 

 

大幅な労働人口の減少が予測されていた2007年、政府は「改正高齢者雇用安定法」を策定(2006年)し、65歳までの雇用確保措置を義務付けたことにより団塊世代の一斉離職の食い止めに成功しました。高齢者の7割近い方(65.9%)が65歳以上を超えても働きたいという希望を持っており、「働きたいが働いていない高齢者」は65歳以上で顕著です。65歳以上の就業率は22.3%(2016年)であり、15-64歳までの生産年齢人口の減少を防止するとともに高齢期に生活困窮に陥ることを防ぐためにも、きめ細かな就労支援制度が必要になっています。

 

1-2.背景② 長時間労働

日本の長時間労働者の割合は欧米諸国と比較して多く、仕事と家庭の両立が困難になっている労働者の割合が高くなっています。
週労働時間49時間以上の労働者の割合を以下の表に表しました。

 

2016年に政府が実施した監督指導では10,059事業場中4,416(43.9%)事業場で違法な時間外労働がありました。こうした時間外労働により家庭に費やす時間が少なくなり、子供のいない家庭が増える要因となっています。また、「労働時間・休日・休暇の条件が良い会社にかわりたい」という理由で転職したいと思う若者が2009年度では37.1%であったのに対し2013年度では40.6%と増加してきています。労働者が健康に働くために労働時間の厳格化や良好な人間関係づくりなど職場環境の整備が必要になっています。

 

1-3.背景③ 雇用形態の違いによる格差

多くの企業で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差や労働条件の違いなど不合理な待遇の差が生じています。非正規雇用労働者数は上昇傾向であり、30代以降で子育てや介護などの理由で自ら非正規雇用を選択している労働者が増加している反面、非正規雇用労働者全体の約半数を占める、正社員として働きたいが職が見つからなかった「不本意非正規雇用労働者」も増加しています。
非正規雇用労働者数の推移を以下のグラフに示します。

 

1984年と比較すると2016年には非正規雇用労働者数が2倍以上となっており、非正規雇用労働者の大幅な増加に伴い労働分配率の低下や賃金格差なども拡大してきています。非正規雇用労働者の正社員へのキャリアアップ支援や労働分配率の低下に歯止めをかけるとともに、大企業の収益をより中小企業・小規模事業者の収益や賃金に還元する必要があります。また、上昇傾向にある賃金引上げ率の維持と労使交渉の賃上げ率上昇の維持のためにも生産性向上への政策が必要になってきています。

 

2. 「働き方改革」の各課題と対策

2-1.課題① 労働参加率の向上と高齢者の就職支援

〈現状〉

  • 「正社員だった女性が育児等で一旦離職すると、非正規雇用で復帰せざるを得ない」

⇒正規雇用での復職率は12%、非正規雇用での復職率は88%(2015年)

  • 「金融危機以降の2000年代から労働参加率の低下が続く」

⇒転職入職率は8.5%と低く、転職にあたって様々な障害がある

  • 「高齢者の約7割が65歳以上も働きたいという希望を持っており、働きたいが働けていない高齢者は65歳以上で顕著である」

⇒65歳以上の就業率は22.3%(2016年)、65歳以上も働きたい高齢者は65.9%(2013年)

 

〈政府の対策〉

  • 「子育て等により離職した正社員女性等の復職の推進」

⇒復職制度を持つ企業の情報公開を推進するために、復職制度の有無についてハローワークの求人票に項目を新設、復職制度を導入して希望者を再雇用した企業を支援する助成金を創設する

  • 「転職・再就職者の採用機会拡大のための指針の策定」

⇒年齢に関わりない多様な選考、採用機会の拡大に向けて、転職者の受け入れ促進のための指針を策定し、経済界へ要請する

  • 「成長企業への転職支援」

⇒転職者採用の評価や処遇の制度を整備し、中高年者の採用開始や転職・再就職者採用の拡大を行い、生産性向上を実現させた企業を支援する

  • 「継続雇用延長等に向けた環境整備」

⇒将来的に継続雇用年齢等の引き上げを進めていくため、2020年までの期間を企業等により65歳以降の継続雇用延長等の集中支援期間を設けるとともに65歳を超える継続雇用や65歳までの定年引上げ等を支援する助成措置を強化する

 

2-2.課題② 長時間労働の解消

〈現状〉

  • 「日本人の年平均労働時間は1,729時間と、欧米諸国と比較して長い」

⇒アメリカは1,789時間と年平均労働時間は日本を上回るが、49時間以上の長時間労働者の割合は16.4%であり、日本の21.3%よりも低い

  • 「26.2%の事業場で45時間以上の1ヶ月の法定時間外労働が行われている」

⇒全体26.2%のうち大企業で20.6%を占めている

  • 「長時間労働を自慢する・超多忙なことが生産的だといった価値観を持つ“モーレツ社員“が多い」

⇒高度経済成長以降からバブル経済崩壊後まで企業や社会からもてはやされて日本株式会社の主な担い手となっていた

  • 「過労死・メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合が政府目標の7割程度である」

⇒週労働時間が60時間以上の労働者の割合は全体では低下傾向にあり1割弱であるが、30代男性では16.0%と高い水準で推移している

 

〈政府の対策〉

  • 「長時間労働の是正等に関する政府の数値目標の見直し」

⇒職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う

  • 「監督指導の徹底」

⇒“過重労働撲滅特別対策班”等による厳正な対応、違法な長時間労働等を複数の事業場で行うなどの企業に対する全社会的な是正指導の実施、是正指導段階での企業名公表制度の強化など法裁判の執行を強化する

  • 「時間外労働の上限規制」

⇒原則:週40時間を超えて労働可能となる時間外労働時間の限度を月45時間かつ年360時間とし、違反には特例を除いて罰則を課す

  • 「労働者の健康確保のための取り組み強化」

⇒産業医、産業保険機能の強化を図るための方策を検討し、必要な法令・制度の改正を行う

 

2-3.課題③ 非正規雇用と正規雇用の格差の是正

〈現状〉

  • 「非正規雇増加」

⇒非正規雇用労働者数のうち、不本意非正規雇用労働者数は296万人であり、非正規雇用労働者全体の15.6%を占める

  • 「非正規雇用労働者の年収はほぼ変わらず300万円前後である」

⇒正規雇用労働者の年収は勤務年数に応じて上昇していき、非正規雇用労働者との賃金格差の拡大が生じている

  • 「正当な処遇がなされていないという企業に対する不満や不信感が非正規雇用労働者の中で生じている」

⇒仕事への意欲低下、自主退社・失業へつながる

 

〈政府の対策〉

  • 「同一労働同一賃金の法整備」

⇒職務内容、職務の成果、能力、経験等に対する正規雇用労働者とパートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者を通じた公正な評価・待遇決定の推進や、そうした公正な待遇の決定が労働者の能力の有効な発揮等を通じ、理念を明らかにした上でガイドライン案の実効性を担保するため、裁判で救済を受けることができるよう、その根拠を整備する法改正を行う

  • 「最低賃金の引き上げ」

⇒2016年は最低賃金を全国加重平均で25円の引き上げを実施、引き続き年率3%を目途として名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていくことにより全国加重平均が1,000円となることを目指す

  • 「最低賃金引き上げ支援」

⇒最低賃金の引き上げに向け、生産性向上のために設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に対し、設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度を拡充する

 

3. 企業における「働き方改革」の最終目標である“生産性向上”の実現へのプロセス

① 現状の分析

  • 従業員の意識調査
    ⇒従業員の意識に一番影響を与えている因子(仕事内容・労働環境・人間関係・賃金制度)は何かを明らかにし、それに対する解決策を見出すことにより、従業員が業務に対するやりがいをより感じられるにする
  • 人事制度・勤務形態・労働環境などの見直し
    ⇒生産性向上を促進するための人事評価基準の見直しや短時間勤務制度の導入などを行う

② 業務・制度改革

  • 業務内容と人件費・時間の明確化
    ⇒業務内容の見直しを行い、その業務に費やしている人件費や時間を明確にして生産性向上に向けた施策を行えるようにする
  • 従業員の健康確保
    ⇒ストレスチェックや時間外労働のチェックを実施し、従業員の健康確保のための組織改革・労働環境改革を行う

③ 社員の意識変革

  • 経営者・管理職層の意識変革
    ⇒従業員の意識を変革させるためにはまず、トップである経営者が率先して自分自身の意識改革を行いメッセージの発信・呼びかけなどにより、その下に位置している管理職層の意識改革を導くことが必要である
  • 現場従業員の意識改革
    ⇒現場の働き方をマネージする管理職層からの呼びかけ・ロールモデルの提案等を受け、現場の従業員一人ひとりが本気で業務の効率化に取り組もうとする意識を持つことが重要

 

4. 企業の「働き方改革」への取り組み事例

  • 伊藤忠商事株式会社
    残業ありきの働き方を今一度見直し、所定勤務時間帯(9:00-17:15)での勤務を基本とした上で夜型の残業体質から朝型の勤務へと改め、効率的な働き方の実践を通して、総労働時間の削減を図る

 

  • 三井物産株式会社
    「社員一人ひとりが生き生きと働ける会社」の実現

 

  • コニカミノルタ株式会社
    労使委員会である人事制度検討委員会にて「WLB3ヵ年計画(2012 年度~2014 年度)」を策定。「限られた時間の中で成果を発揮する働き方の実現」、「育児・介護等の生活環境の変化が発生した場合にも、キャリアをあきらめずに働ける仕組み作り」を目的に、2012 年度は育児支援、2013 年度は介護支援、2014 年度は長時間労働対策をテーマとして推進してきた。

 

5. まとめ

2016年9月に制定された「働き方改革」ですが、近年では積極的に取り組む企業も増えてきております。一見複雑で制度や改革が多いように思われる「働き方改革」も、経営者の方や管理職の方が背景や目的・実現へのプロセスを理解し、社内で呼びかけることで「働き方改革」の目的である生産性向上の実現に近づけるのではないでしょうか。

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arakawa shuho

こんにちは!インターンシップ生の荒川と申します。 読んでくださった皆様の"海馬に残る記事"を目標に記事を書いていきたいと思っております。 宜しくお願い致します。

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